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みやけばなし

毎週金曜更新

顕微鏡のレンズが大事なキツネと距離のはなし

 人間関係の、微妙な距離の引き離し方がわからない。

「あなたのことは嫌いではありませんが、一緒に飲みに行ったり出かけたりはしたくない」と伝えるのはとても難しい。理由をつけて何回も断ればいいのかもしれないが、その理由にも限りがあると思う。決めつけずにまずは飲みに行けばいいのかとも思うが、1度飲みに行ったら次はもっと断りにくくなってしまうのは目に見えている。

あと、LINE交換も断れない。何といえばいいのかわからないから、交換した後でメッセージが来ても既読無視することになってしまう。みんなどうしているのだろう。

 

 フルタイムで働いていると、基本的には休みの日にしか遊べない。月の休みの日を10日と仮定して、毎週金曜はブログや絵を描くのに使っているから残り6日、家事や買い物や行きたいところに出かけたいという用をこなすのに4日使ったら、残りは2日だ。つまり、月に2日しか人と遊ぶ余裕はない。2日しかないなら、一緒にいて楽しい人と過ごしたい。なのに「どうしたら友人ができますか」という悩み相談はよく見かけても、「どうしたら友人を増やさずに済むか」という悩みは見たことがない。

 

 人と人との距離は近ければいいというものではないと思う。顕微鏡のレンズと同じで、相手がはっきり見えるちょうどいい距離というものがあって、近すぎても遠すぎてもよく見えないということが出てくる。適正な距離を保つことが大事だ。問題は、相手から見た適正な距離と自分から見た適正な距離が違う場合に生じてくる。私は、人間として平均よりだいぶ『遠視』だということになる。

 

 自分を知ってもらおうとしたり、プライベートを無理やり聞き出して自分の重要性を相手にアピールして『近づく』ことと、『仲良くなる』ことはちがうんじゃないか。私は、人に『近づこう』とする人よりも、「自分の本業に夢中になっていて仕事の話をしている時でも本業に絡めて話してくるからよほどそれが好きなんだなあと伝わってくる人」とか、「何を考えているかわからないけど私が本を読んでいても隣で黙って放っておいてくれる無口な人」とか、「声の調子がちょうどよくて当たり障りのない会話だけを歯切れよく間のいい距離で交し合える人」のほうが、「一緒に飲みに行ったら面白そうだなあ」と思う。

 

『しんぼうが大事だよ。最初は、おれからすこしはなれて、こんなふうに、草の中にすわるんだ。おれは、あんたをちょいちょい横目でみる。あんたは、なんにもいわない。それも、ことばっていうやつが、勘ちがいのもとだからだよ。一日一日とたってゆくうちにゃ、あんたは、だんだんと近いところへきて、すわれるようになるんだ……』(『星の王子さまサン=テグジュペリ・作/内藤濯・訳より、キツネ)

 

 幸いなことに、私にもキツネのような友達が何人かいる。今いるキツネを大切にしたい。

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家の中に九官鳥がいます

 夏目漱石の『変な音』という随筆がある。「隣の病室から何かをこするような音がして気になる」という話だ。他人の音の正体がわからないというのは、とても気味が悪い。

 

 今住んでいるアパートの下の階から、時折変な声と音が聞こえる。

 むりやり文字におこすと、こんな感じ

 

 

ガンッ(扉を閉める音)

てぁーとぁーとうーい たぁーたぁーたぁーたぁーたぁーたぁー(人の声)

(2秒ほどの間)

ガンッ(床か天井?を何か棒のようなもので突くような音)

 

 

 これが2~3回くり返される。

 何をしているのか、まったくわからない。

 

 発声練習なら、私もしていた時期があるので何とも思わない。以前ストレスで声が出なくなった時、ボイスクリニックで教えてもらって、公園の木に手をついて、木を押しながら「にー」と言いながら声出しをしていた。そういうのならわかるが、発声練習なら床をこづく必要はないはずだ。

 

 何をしているのかわからないままだとこわいので、「きっと下の人は何かを召喚しているんだ」と思うことにした。床に魔法陣を描いて、呪文を詠唱した後に杖で床をこづくと何か出てくるんだろう。しかししばらくするとその設定も「何を召喚しているのか?」となんだか落ち着かなくなってきたので、九官鳥を召喚していると思うことにした。下の階の人は九官鳥を召喚しているうちに死んでしまったのだと思う。九官鳥が召喚士(部屋の住人)の呪文を覚えていて、呪文を唱えながら壁をつついているのだと思う。そうすると、九官鳥がどんどん増えてしまうのではないか。九官鳥は召喚した仲間をペットオークションにかけてやりくりしているに違いない。家賃もおそらくモバイルバンキングで払っているのだろう。大変だ。

 

 しかしながら『変な音』の夏目漱石も、「実は隣の病人もこちらの髭剃り用の剃刀を磨ぐ音を気にしていた」というオチがついていたから、人間だれしも生活していれば、自分のわからないところで奇怪な生活音をたててしまっているのかもしれない。九官鳥は本当は発声練習をしているのかもしれないし、家賃を払えなくて困っているかもしれない。

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違いがわかりたい

 家でコーヒーを淹れてみたいと思う。しかし、その道のりは険しい。

 

 まず、ペーパードリップかフレンチプレスか、どちらがいいかわからない。どう違うのかも、味覚で判別できるほど私の舌は肥えている自信がない。だったらどちらでもいいじゃないかという気もするが、それでは嫌だ。「やっぱりフレンチプレスが好きだなあ」と言いながら飲みたい。

 本を読んだので、ペーパードリップは紙を通すからさっぱりしていて、フレンチプレスは豆をつぶす(?)から濃厚という理屈はわかる。わかるがそれぞれがどんな味なのかを舌で覚えてから器具を買いたい。それも、自分で納得いくデザインの、それなりに高いのを買いたい。しかし喫茶店の人は「これはドリップで淹れました」なんていちいち言ってくれないから、自分で淹れなければ永久にわからないのかもしれない。

 

 大体からして私はコーヒーの味にそんなにうるさいわけではない。さすがにネスカフェと淹れたコーヒーの違いはわかる。あとは、昔地元の薄暗いカラオケに入ってドリンクバーでアイスコーヒーを押したら、納豆を煮詰めたみたいな汁が出てきたことはある。おそらく、バイトが液の濃さを間違えたか、何か機械の故障だったのだとは思うが、そのぐらいでないとなんだかよくわからない。スタバにはしょっちゅう行くのに、「コロンビアです」といわれても「はい」としかいえない。よくわからないからだ。

 相方はペーパードリップでコーヒーを淹れている。お湯をまず多めに注いで間をおいて蒸らした後、まんべんなくお湯をかけている。私が一度にたくさんお湯をいれようとすると怒る。しかしそれで味がどう変わるのかはよく知らない。たぶんそうしたほうがおいしいのだとは思う。でもよくわからない。もしかしたら、てきとうに全部お湯を注いで洪水みたいにして淹れたコーヒーでも、私には違いがわからないかもしれない。

 

 コーヒーを飲んで「ここのは特別おいしい」と思った記憶がない。コーヒーは毎日飲んでいるのに、いろんなところで飲んでいるのに、そんなことでコーヒーを淹れるのがうまくなれるのだろうか。似た話だと、音痴には喉音痴と耳音痴があって、自分で自分の調子が外れていることがわかっている人は練習でうまくなれるのに対して、耳が音程の違いを聴きわけられない人はいくら出まかせに歌を歌ってもうまくなれないという。私のコーヒーも同じで、まずおいしいコーヒーとまずいコーヒーを区別できるようになってからコーヒープレスを買わないといけないんじゃないか。

 そのためには本当においしいコーヒーを飲んでみたいと思う。あるいは本当にまずいコーヒーでもいい。ここのコーヒーはまずい!こんな風に淹れてはいけませんよ、と誰かに言ってもらいたい。

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みやけばなし

 

 エッセイというものを、私は軽蔑していた。

 エッセイは、学がなくても書ける。何も調べなくても書ける。

 「STAP細胞はある」と、学術書で言ったら詐称になるが、エッセイの中でいくら「STAP細胞ある気がするなあ」と言い続けても、だれにも怒られない。

 えんえんと愚痴を書きつらねて、それを本にして売って、金を稼いでいるようなものもある。

 だから図書館で働いている私は、「エッセイは最も価値のない本だ」と思っていた。

 ここまでエッセイをこきおろしておいてなぜエッセイブログを書くかと言えば、私は恐ろしく忘れやすいからである。どこかに文章で残さなければ、昨日考えていたこともろくに覚えていない。思想の体系をまとまった形にしておくことができない。

 これを読んで人にどうなってほしいということは、私は求めることをしない。しかし、エッセイほど人間のナマの精神に近い形式はないと思う。心の中で考えていることの移り変わりをそのまま見るということは、ほかにはない体験だ。

 エッセイは誰でも書けるしダサいし読んでも身にはならないが、生活する心持ちの参考くらいにはなるかもしれない。読んでも意味のない文章、それでいて読んだ後に「読まないよりはよかったかな」と思えるような文章を書くように心がけます。

 

 本年も、どうぞよろしくお願いいたします。 三宅

 

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12月24日箱根ツーリング覚書

平成28年12月24日から25日にかけて、やることがなかったので一人でバイクで箱根に行った。

その話を相方にしたところ「今まで聞いたソロツーの中で一番酷い」との評を得たので、来年始めるブログに先駆けて自戒も込めてここに残しておくので参考にしてください。



朝7時ごろ家を出た。

途中道を確認中にスタンドをきちんとかけずに跨った姿勢で油断していたらバイクが左に傾いて立ちゴケクラッチレバーの先が折れニュートラルに入れられなくなった。迷ったが走れないほどではないと判断し、バイクでの旅を続行。


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10時ごろ星の王子さまミュージアムに到着。道中イヤホンの音量を上げ忘れてパニックになったりもしたが、悪くない時間で入館。サン=テグジュペリの一生を追える館内展示、土産屋、庭園など内容は満足。ゾウを飲むウワバミのポーチは可愛かったが実用性が疑問だったので買わず。


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続いてガラスの森美術館。混んでいたが悪くなかった。ガラスの大型作品展示と購入できるガラス小物がたくさん。ここでも特別ほしいものは見つからず、チョコを何粒か買って立ち去る。ガラスの粒が散りばめられたツリーのオーナメントが眩しかった。

その後彫刻の森に行こうとしたのだが何故かナビが誘導すべき交差点を誘導してくれず、道に迷いまくる。途中充電しながら何とか宿に着く。wifiの電池が切れた後、曇りのせいかGPSの性能がガクッと下がって焦った。


宿は18時にチェックインと伝えておいたが17時ごろ着いた。すぐ部屋に入っていいと言われたので部屋に向かう。

風呂は貸切個室と展望大浴場があった。貸切個室の方が大浴場より落ち着いて入れた。そもそも大浴場は展望場所の扉についたてがしてあって入れなくなっており、風呂も何故かとてつもなく熱い湯と普通の湯の二種類しかなく、不満だった。部屋にもユニットバスがついており、こっちの方がマシではと思った。体感としては貸切個室>ユニットバス>家の風呂>大浴場であると感じた。

ボールペンを持ってきていなかったので宿の土産屋で高いペンを買って三浦を描いた。ついでに仕事場のお土産も買った。


夕食までテレビを見て時間を潰し、浴衣で夕食会場へ。これが恐ろしかった。クリスマスイブなのでカップルだらけなのだ。六本木の話とかしている。夕食の時間は二回に分かれているのに、席が埋まるほど混み合うとは思わなかった。あと席が近い。一人客は私だけだったかもしれない。怖くて顔を上げられなかった。そして食事半ばで気づいたのだが、左にあるガラスにも会場の様子が映っているのだ。手持ち無沙汰で挙動不審になり、宿の注意書きメモを読んだりスマホをいじって耐えた。食事中何度も口の中を噛んだ。本を持ってくればよかった。支配人の滑舌が悪く、『タイミングのいいところでご飯をお持ちしますのでおっしゃってください』というのが聞き取れず、なぜかデザートの直前に白飯だけ出されて無理やり食べた。デザートにはチョコムースにイチゴのサンタさんが乗ったものが運ばれてきた。「サンタさんからのプレゼントですよ」と言われた。お前(支配人)に言われてもなぁ。食事は不味くはなかったがもはや味がしなかった。景観を害しているのではという自意識が辛かった。


夜は喘ぎ声が聞こえるのではと不安になったが流石にそれはなかった。ニコニコ動画を見ながら床につく。予想通り掛け布団がペラペラだった。モコモコパジャマを持って来なかったら風邪をひいていただろう。昔それで合宿で高熱を出したことがあった。今回唯一うまくいったことだと思う。


チェックアウトが11時ということだったので8時に起きて会場で朝食(バイキングだったので夕食ほどではなかったがやはり気まずかった)をとり、宿の代金を払って出る。彫刻の森に行こうとしたが、何故かやはりナビにスルーされ、諦めた。


途中電話がかかってきた。上司からで、どうやら今日は出勤日だったらしい。今箱根にいるので今日は行けないと伝え、動揺した気持ちのまま走っていたら狭い右カーブから急に道が広くなった胃袋のような形の道で対向車を避け切れず右に転倒。対向車は助けてくれずスルーされたため、近くのおじいさん二人に助けを求めてバイクを動かした。怪我はしなかったがブレーキレバーが根元から折れたため、これ以上の走行は不可能と判断。

とりあえず坂の上の平坦な場所までバイクを移動させようとバイクにまたがってエンジンをかけ、少し走らせたが、上り坂でフロントブレーキが使えないのはかなり危険で、途中慌てて後ろにズルズル後退してまたコケそうになり、「誰か助けて」と叫びながらとっさに右足でリアブレーキを踏みながら左足で着地して静止したシーンがあった。右に倒れなくてよかった。あの時後続車が来ていたら追突していた。

何とか平地(近場の駐車場)にバイクをとめ、レッカーを依頼。一時間後にレッカーが来たため、任せて電車で帰ることに。


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現在地に一番近い大平台という駅から電車に乗った。駅付近は温泉宿が点在していてつげ義春の漫画の世界のようだった。箱根鉄道でも特殊な駅だったようで、単線をすれ違わせるために待機させるポイントがあった。トンネルを抜けたと思ったら、電車が急に止まり、後退し始めたのだ。あれは面白かった。景色もとてもよかったので、結果オーライだなと思ったりした。


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帰り道に海福雑貨に寄った。完全に住宅街の中にあった。瓶や石がぎっしり並んでいた。コンパスを買うか迷ったが、二つあったコンパスのどちらもしっくり来なかったのでやめておいた。登戸のパスタ屋でミートソーススパを食べて帰った。嫌な目にもかなりあったが、行かなければわからないことがたくさんあったので、行ってよかったなと思った。家の風呂は最高だった。


この旅の教訓

バイクを停める時は跨っていても必ずきちんとスタンドをかける。

・ナビが聞こえない時は音量を疑う。

・ナビを信用しすぎない。不安になったらきちんと進めているか停まって確認する。

・風呂は貸切個室を選ぶ。それがダメなら部屋の風呂を使うことを検討する。(部屋の風呂はシャンプーやボディソープがないので持っていく)

・コンタクト洗浄液、歯ブラシと一緒に日焼け止め、アイブロウペンシル、制汗剤、ボールペンと紙も忘れずに。

・宿の掛け布団はペラペラなのでモコモコパジャマは必須。

・文庫本を一冊持っていく。

・クリスマスに一人で過ごさなくてはいけないときは家で大人しくしている。

・宿で食事はとらない。泊まるだけにする。(気まずいし一人客だとバレて危険)

・充電器とwifiルーターは必須。スマホと充電器とルーターを全部充電すること。

・気持ちが動揺している状態で走らない。自分では落ち着いていると思っても、一旦休憩する。

・狭い道こそキープレフトを心がける。対向車が来たら避けられなくなる。

・意外と助けてくれる人はいる。

・二つのうちどちらを買うか選べなかったらどちらも買わない。

・宿の予約する前に本当に仕事が休みか確認する!