DELTARUNE考察『UNDERTALE2 トビー・フォックスの逆襲』

【注意!】

この考察はToby Fox氏制作のRPG『DELTARUNE』のネタバレを多分に含みます。

未プレイの方はプレイ後にお読みいただくことを強く推奨します。(体調の良いときにプレイすることを勧めます)

 また、この考察を通して特定の考察及び解釈を否定する意図はありません。あくまで個人の見解としてお読みください。 

 

 

 

 

DELTARUNE考察『UNDERTALE2 トビー・フォックスの逆襲』

 

1.ここはどこ?

2.UNDERTALEと政治

3.TobyがDELTARUNEを作った理由

4.君たちはどう生きるか

あとがき

 

 

1.ここはどこ?

まず、ダウンロードボタンをクリックしたら、よくわからないまま突然プレイに3時間はかかるゲームが始まってしまってみんな困惑したと思う。ガスターに器(アバターのようなもの)を作るように言われたと思ったら破壊され、「自分が 何者かになるか… この世界では誰も 選ぶことはできない。」と宣告され、以下のような惨憺たる光景を目の当たりにすることになる。

 

・学級崩壊、いじめ

・種族差別(クリスの部屋の持ち物が少なすぎる、スージィの孤立、アルフィーの物が隠される、アリゲッティに「ちかよらないで」と言うクリス、等々)

・がんに侵されて入院しているノエルのパパ

性的少数者差別(引きこもるメタトンとナプスタブルーク、ノエルのパパの『よりによってバラ』『どっちも 「やじゅう」だからねえ!』のセリフ)

・虐待(離婚したとはいえ、母親が父親の差し入れた花束をこれ見よがしに捨てるのは精神的虐待にあたるのではないか)

 

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 探せばまだまだ出てくると思う。

 ↓【参考】DELTARUNEの憂鬱/MTT9000

mtt9000.hatenablog.com

 巧妙なのが、これらがどれも確信には至れない程度のギリギリなラインで描写されているということだ。しかし、人生の中で上記のことに遭遇してきた人は、何とも言えない不快感や絶望を抱きながらゲームを終えたのではないか。

 

 筆者の場合、正直なところ一周した時点でゲームをやめてしまいたくなった。しかし、無理矢理2周目をやることにした。次項の点が気になったからである。

 

 

 

2.UNDERTALEと政治

話は前作に飛ぶが、UNDERTALEは政治的に見ても非常に面白いゲームである。反人間派を右派、親人間派を左派とすると、UNDERTALEの権力者は下記のように並べることができる。

 

 ←左(親人間)  右(反人間)→

 メタトン パピルス アルフィー イヌ トリエル アズゴア アンダイン

 

 しかし、この7人を実際の権力(エンディングで生存した場合王になる優先度が高い)順に並べると

 

 ←優先度高   優先度低→

 アズゴア トリエル アンダイン メタトン パピルス イヌ アルフィー

 

 と設定されているため、誰を殺して誰を生存させるかによって最終的な権力者が変わる。

 つまり、UNDERTALEはプレイヤーの選択によって地下世界の政治情勢を操作することができるゲームとも捉えられるのだ。

 

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 実はDELTARUNEの場合にもこの政治操作システムは機能している。DELTARUNEの世界ではモンスターは規定値以上のダメージを受けると逃げてしまうためどのみち殺せないのだが、一匹も戦闘で追い払わずに玉座までたどり着くと、部下たちが謀反を起こし、政権が交代されるのだ。

 先王の政治下では、無能(ルールノー)が重役ポスト(王子の世話役)を得る一方で本来パズル担当が適任なはずのキャラクターが衛兵やチュートリアル担当などの不適な職場にまわされたり、戦場に出ることを拒否したことを理由に投獄されたりと国民がさんざんな目に合っているのが見てとれる。キャラクターデザインが鏡の国のアリスっぽくてお洒落と評判だが、トランプ柄・銃規制慎重派・消去法で選ばれたなどの点に着目するに、ドナルド・トランプの政治を皮肉っているのではないか。

 

 

3.TobyがDELTARUNEを作った理由

Tobyが断言したので確定したが、DELTARUNEchapter1は、どのような選択を行ってもエンディングは分岐しない。モンスターを誰一人傷つけず、夢の世界でダークナー達との冒険を大団円に終えても、クリスは自分のタマシイを放り出してナイフを手にしてしまう。

 最初はそれが信じられなくて、5回もクリアした。チュートリアルでも極力ダメージを与えないようにしてみたり、現れた敵を全員追い払ってみたり、少しだけ追い払ってみたり、セーブデータをコピーしたり消したりしてみた。無駄だということがようやく腑に落ちたとき、Tobyがこのゲームを作った理由がわかった気がした。

 

 そもそもこのDELTARUNEはUNDERTALEをクリアした人へ、という名目で作られている。あの優しい世界を通ってきた人なら、一周目のラストシーンでクリスがタマシイを放り出したとしても「でもきっとまだ何かあるはずだ」「絶対にクリスが幸せになれるエンディングがあるはずだ」と思い込んでしまう。

 夢の世界でセーブをすると、もともとあった『Kris』のセーブデータがプレイヤーの名前で上書きされる。このときプレイヤーのタマシイがクリスに乗り移り、クリスを真の意味で操ることができるようになり、ハッピーエンドを目指し始めるというわけだ。でもそれは、クリスからしてみればいじめの被害者に無理矢理和解を強いるようなもので、余計なお世話なのだろう。

 

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 あの世界では、クリスはクリスとして生まれてきた以上、夢で幸せだろうが不幸だろうがクリスとして生きていかなければならない。あんな汚れた理不尽な世界でニコニコ笑って生きていくのは嫌だったのだろう。だから最後にプレイヤーが埋め込んだタマシイを外に放り出して、自分の意志でみんなを皆殺しに行くんじゃないだろうか。

 それでもクリスにはどうしても幸せになってもらいたい!と思うのが人情というものだろう。chapter1終了間際の散歩中、サンズはパピルスと友達になってくれと持ち掛けてくるし、パピルスは家から出てこないけど、それでも家で変わらず待ってくれている。メタトンだって、生きてさえいてくれればいつか友達になれるかもしれないのに。何故なのか?

 

4.君たちはどう生きるか

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UNDERTALEのファンの中には、UNDERTALEを通して新しい友達と出会った人もたくさんいると思う。DELTARUNEもそれになぞらえ、クリスとスージィが夢の中で共闘して友達になり、現実に帰って世界をメチャクチャに破壊する物語なのだと思えば、少しは気も晴れるというものだ。差別、虐待、蔑視、憎悪…Toby Foxが『やさしいRPG』を作るためにUNDERTALEから意図的に排除した『現実』。それはUNDERTALEを愛する人の現実であり、Toby Fox自身の現実でもある。つまりDELTARUNEとは、UNDERTALEを愛する人すべての人にとっての現実世界を描いた作品、ということになる。

 UNDERTALEは世界中で大人気で、数々の賞をとっている。一方、トランプの少数者軽視主義は時代の潮流に逆行すると批判され続けながらも未だに衰える兆しがない。こんなに素晴らしいゲームが生まれた国なのに、なぜアメリカだけが?SAVE THE WORLDって何だっけ?

 

 スージィはクリスを脅しながら「だまってる ヤツを みるとイラつく」と発言する。同様のことをキングも言うシーンがあるが、マイノリティ側が言うのとマジョリティ側が言うのでは意味が全然違ってきてしまう。何をしても変わらないバッドエンド、そしてエンドロールで流れる”Don’t forget”の意味は、「僕たちには何もできないように見えるかもしれないけれど、ちゃんとそばにいるよ」という、Tobyの悲痛な反撃と捉えてもいいかもしれない。

 Toby Foxがこんな作品を作らなければならなかったという事実自体が悲しくて仕方がない。不遜を承知で言えば、今抱きしめてあげなければいけないのは、ラルセイでもスージィでもなく、Toby Foxその人なのだ。

 

 

あとがき

 

ここまで把握するまでに周回するのが本当に辛かったです。一人で5回クリアしたので、肉体的にも精神的にもガタガタになりました。でも、あの世界線にメタトンが生きてるって思っただけでも頑張れました。自殺しなかったんですよ、彼。すごくないですか?彼があそこで生きてるっていうだけでも、DELTARUNEをやった甲斐あります。

 

 関係ない話ですが、先日ドナルド・トランプが「トランスジェンダー等に関わらずすべての人を生まれた性別で扱う」という政策を提言したばかりですね。

 

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出てきてくれないかなぁ。

 

DELTARUNE考察『UNDERTALE2 トビー・フォックスの逆襲』(終)