ミヤケ書房

UNDERTALE他考察ブログです。雑感エッセイブログ→https://miyakebanashi.hatenablog.jp/

ポケットモンスター ソード/シールド考察『ポケモンと教育』

ポケットモンスター ソード/シールド考察『ポケモンと教育』

 

【注意!】

この考察は『ポケットモンスター ソード/シールド』のネタバレを多分に含みます。未プレイの方はストーリーモードを一通りプレイした後にお読みいただくことを強く推奨します。

 

 

1.子供をどう育てるべきか

 

守破離」という言葉がある。芸事を身につけるためには最初からがむしゃらにやっていてはだめで、まず『型』を身につける必要があり、その後身につけた『型』を破ることで芸として大成するという考え方だ。ホップとビートの物語は、2つ合わせてこの守破離の流れを体現している。

 

 

最序盤から登場し、今作のライバルキャラの中で最も主人公に近い位置に陣取ってくる、チャンピオンの弟・ホップ。貴方がプレイし始めたとき、最初の頃の彼の印象はどんなものだっただろうか。申し訳ないが筆者の場合、「こいつ頭大丈夫かな?」というのが第一印象だった。タイプの相性を理解しているのに、実践では効果抜群のとれる技を狙ってこない。

 

f:id:michemiyache:20191220022407j:plain

 

 こちらが抜群を決めるとわざわざ口に出して褒めてくるのに、はがねタイプのアーマーガアにとっしんしてくるホップを見ていると、ブラック・ホワイトでわざと野生のポケモンを育てずにぶつけてくるNにも似た不気味さを感じた。

 しかしそれは、ポケモンが子供向けのゲームだからでもAIがバカだからでもないことが、ストーリーを進めるにつれて徐々に明るみに出てくる。

 

 ホップは本心では「自分の夢は何なのか?」「兄貴の偉大さに乗っかろうとしているだけではないか?」と終始迷っている。チャンピオンの弟だからチャンピオンを目指すという『型』を疑いもしなかったホップは、ビートや主人公に負け続け、さらに兄がチャンピオンでなくなることで強制的に『型』から放り出されてしまう。そして主人公達と各地の混乱を沈め、伝説のポケモンをめぐる冒険を終えたのち「困っているポケモンを助けたい」というおぼろげな方針を持つ。最終的には『型』から開放され、ポケモンの研究をするという自分の夢を見つけることになる。

 

引用(先駆者様のホップ考察)

 ワルツと推しポケとホップくんとポケモン盾の旅

https://togetter.com/li/1436365

 

 

そんなホップに対し、真逆のような人生を送っているのがビートである。

 孤児院育ちのビートはローズに才能を見出されることで「ねがいぼしの採集」という目的を持ち、そのためなら何でもするというとんでもない悪ガキとして登場する。

 ローズはビートに対して、スクールに入れたりはしたもののいわゆる教育と呼べるようなことはほとんどしていなかったらしい。久々に会ったビートの名前を思い出すのに時間がかかったり、成果を報告しているビートの話への相槌の打ち方も、「みんなで盛り上げられたらいいよね(大意)」というほとんど話を聞いていないような的を得ないもので、興味がないのが丸見えだった。

 

 チャンピオンである兄の背中を見て育ち、周囲からの期待に反発することなく兄と同じ道を行こうとするホップ。

 拠り所のなさから自暴自棄になり、とにかくがむしゃらにローズに認められようとするビート。

 ビートがホップにひどい言葉を投げかけるのは、妬ましさからくるものなのだろう。

 目をかけてくれる人が誰もいない自分に対し、チャンピオンの弟という恵まれた環境で育ったホップはそれこそ「エリート」に見えたに違いない。

そんなビートも、一度社会から排除されかけた後、ポプラという素晴らしい師と出会い、めでたく『型』を得ることになる。

 

f:id:michemiyache:20191220013205j:plain

 

子供の育て方については人によって様々な意見がある。「親があまり無理強いすると子供の才能を潰すことになる」とか、「甘やかしてばかりでは子供のためにならない」とか。

 初代ポケモンから1世代分の時が経った。初代をプレイしたかつての子供たちと、彼らの子供たちが一緒に遊ぶことも想定して作られているのだろう。このゲームにおいて、ビートとホップの物語は、「子供にとって必要なものは、子供によって違う」という、当たり前のようでいてわかりにくいことを、明快に示してくれている。

 

 

 

2.大人も悩んでいる

 ガラル地方は、たった一人のチャンピオンの座を中心に形成されている世界である。

10年もの間チャンピオンに君臨し続けたダンデは、その座を明け渡してからはバトルタワーでの活動に勤しむようになる。この人は本当に純粋にバトルが好きなんだなあと思わせる顛末だ。

 

 しかし一連の騒動収拾後スッキリしたのはダンデくらいのもので、ストーリーの中で提示された問題のほとんどは何も解決していない。スパイクタウンの移設是非をめぐる都市一極集中と過疎問題、大都市のエネルギー資源問題…子供も大変だが、アイデンティティを確立して大人をやっている人たちもそれはそれで苦労しているのだ。

(もっと言えば一番マズイのはキバナで、キバナは前述の『型』の話でいうとまだ『型』が消失しただけの段階に一人で取り残されている)

 

 続編があるとしたら(おそらくあるだろうが)、10年後に現れた次世代の主人公が、大人になったホップやビートがいる世界を冒険する話にしてくれたらいいなと思う。さすがに10年も活動すればボールガイも公式認定してもらえるんじゃないかな。

 

ポケモンって 奥が深いボルね~!

 

ポケットモンスター ソード/シールド考察『ポケモンと教育』  終)