ミヤケ書房

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DELTARUINE Chapter2 スパムトン考察2『キミがスターに願うとき』

【注意!】

 この考察はToby Fox氏制作のRPG『DELTARUNE』Chapter2のネタバレを多分に含みます。未プレイの方はプレイ後にお読みいただくことを強く推奨します。

 また、この考察を通して特定の考察及び解釈を否定する意図はありません。あくまで個人の見解としてお読みください。

 

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DELTARUINE Chapter2 スパムトン考察2『キミがスターに願うとき』

1.マネキンとスパムトン

2.酸液で縮んだ?

3.★★もうキャラデザで悩まない★★

4.キミがスターに願うとき

 

 

 

 

1.マネキンとスパムトン

 サイバーシティのアドソンが売っている商品の1つに、白い人型のマネキンがある。

 見た目がスパムトンに似ており、「そうび」することができ、そうびするとスパムトンNEO含む一部の攻撃のダメージ量が削減される隠し効果がある。そして、スパムトン入りのデータディスクを持っている場合、なぜかこのマネキンに「入れ」ようとすることができる。スパムトンと何か関係があるのではないか?スパムトンとマネキンの関係性について、いくつかの説を立ててみた。

 

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(入りたくないらしい)



 

①元々マネキンだった説

 自我を持ったマネキンが小さいアドソンとして振る舞うようになり、他のアドソンを売り上げで追い抜くまでになったが、後に館から追い出されたという説。

 

 スパムトンNEOの「ホンモノの男の子」「鼻の長い人形」発言から度々オマージュ元として取り上げられるピノキオであるが、原作の『ピノッキオの冒険』は、よく知られているディズニー版のピノキオとはかなり異なる点がある。例えばディズニー版のピノキオでは、ゼペット爺さんが作った操り人形にブルーフェアリーが命を与えることで動き出したものがピノキオとされているが、原作のピノキオにおいて、ピノキオは初めから生命を持った状態で登場する。まず独りでに喋る「棒切れ」があり、それを爺さんが木彫りの人形に仕立てることでピノキオが顕現するのである。

 

 原作版の経緯になぞらえて考えると、一つの仮説が浮かんでくる。

 アドソンは「スパムトンに似たマネキンを売っている」のではなく、「スパムトンが元々マネキンだった」のではないか?だから、マネキンに入れられそうになると抵抗したり、マネキンを装備していると攻撃を手加減したりしてくれるのではないか?

 そう考えると、「鼻の長い人形として生きる日々」を卒業して「自分の商談」がしたい、「ホンモノの男の子」になりたいという夢とも辻褄が合う。アドソンの一人が言っていた、元々アドソン達と何も変わらない男だったという証言には引っかかるところがあるが、服装にだけ気を配れば意外と「背が小さめな白いアドソン」としてすんなり受け入れられたのではないか。

 

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②マネキン憑依説

 元々はただの売れないアドソンだったが、館から追い出された際に酸液に落ちて一度ゴーストになり、マネキンに憑依した。もしくは元々ゴーストであり、マネキンに憑依することでアドソンとして振る舞っていたという説。

 

 スパムトンはディスクを介してNEOのボディに乗り移るが、この際元々安置されていたNEOの外観や機能がいろいろと「スパムトンっぽく」なってしまう。UNDERTALEにおいてタマシイの性質の変化がボディの外観・機能にも影響を与えていたことから類推して、スパムトンはゴーストに類似した生態を持っていると捉えられる。

 

 騎士との接触により外界を知り、マイクなる人物に裏切られたスパムトンは、ダークナーとしてライトナーに尽くすのではなく「自分の意思で商談がしたい」と考えるようになった。そこでライトナーが残していったNEOのボディに祈りを捧げたが、ライトナーの手を借りるか、よほど大きな負荷をかけなければダークナーがNEOに単体で乗り込むことは不可能であると察した。ライトナーが作成したロボットである以上、ライトナーが乗り込むことを想定して作られていたのだろう。スパムトンNEO戦では、本当ならライトナーのタマシイが入ることで初めて完成するロボットにスパムトンが無理矢理乗り込んでいるからおかしなことになっているのである。

 またUNDERTALEにおいて「ニンゲンのタマシイ1つ」=「地下のモンスター全てのタマシイ」が等価であることが示されていたが、スパムトンもNEOを「BIG」にするために「ライトナーのタマシイ」もしくは「アンポンタン三昧(ダークナーの大量凍結)」を必要としている。

 この当たりの事情を理解するまでに、ゴースト体での試行錯誤があったとしても不思議ではない。

 

 

③マネキン関係ない説

 そもそも酸液は金をも溶かす成分(後述)なんだし、プラスチック製っぽいマネキンなんか突っ込んだら全部溶けちゃうでしょ。あのマネキンは単にビッグ時代に濫造されたスパムトンを模したマネキンの売れ残りであって、スパムトンとは関係ないんじゃない?という説。当然その可能性もある。

 

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(パレッタの店でタグを切ったスパムトンのタイを売っていることもこの説を補強する)



 

 

2.酸液で縮んだ?

 スパムトンが元々マネキンだったとしてもアドソンだったとしても、スパムトンの身長はマネキンやアドソンに比べ低いように見える。元々低かった可能性もなくはないが、これについては「クイーンの館にある酸液で縮んだのではないか」という説が囁かれている。

 

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 クイーンの館攻略の途中、金色のバードリー像がトイレにぶち込まれているのが発見できるが、腕に付属していたはずのクイーン部分が見当たらない。このクイーン部分はラルセイと一緒に酸液の川を移動する際、酸液の中に沈んでいくのが確認できる。

 

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 パレットラーに片付けられたバードリー像がトイレにぶち込まれ、その一部が酸液に沈んでいるということは、普段から「不要になったものはトイレにぶち込み酸液に落とす」という運用がされているのではないか。

 スパムトンが落ちぶれた際、同様のルートを介して館から追い出されたとしたら、行き着いた先は酸液の川ということになる。UNDERTALEではコアの発電力源に「じねつ」(≒マグマ)が利用されていたが、ガスター博士はそのコアに落ちて死亡したとされている。館の動力源であり、マグマの対比となる酸液の川も、ダークナーの肉体に悪影響な成分である可能性は十分に考えられる。

 

 

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(本人がこう言ってるから、別に普通の「スパ」の可能性もあるが…)

 

 あるいは、凋落後パレッタさんになりすまして館に忍び込もうとした際、河口から無理に川を遡ろうとして足が溶けてしまったとか…

 本意なのか不本意なのかは定かではないが、いずれにせよ何らかの理由で足が縮んだという説については結構ありえそうだなと筆者は考えている。ピノキオの原作第十七章、仙女(ブルーフェアリー)の台詞に下記の様な言及があるからだ。

 

「ぼうや、ウソはね、すぐにわかるものなの。なぜって、ウソにはふた通りあって、ひとつは足が短くなるウソ。もうひとつは、鼻が長くなるのよ。」(『ピノッキオの冒険』カルロ・コッローディ/原作,大塚玲/訳,2016,光文社,p109)

 

 

 さらに言えば同作には、「おもちゃの国」で堕落の限りを尽くしてロバになってしまったピノキオが、いろいろあって海に突き落とされ、魚に肉を食いつくされて元の操り人形に戻る場面もある。マネキンの身体に細工や塗装を施してアドソンらしくしていたのに、酸に突き落とされて体表が溶け、元のマネキンに戻ってしまったから、口の関節もろもろが人形っぽいのかもしれない

 

 

3.★★もうキャラデザで悩まない★★

 ここまでスパムトンの過去を考えるに当たり手がかりとなる情報や説を挙げてきた。しかし作中に出てくる情報を集めても、確実なところを特定することができなかった。

 結局過去の詳細については、プレイヤー(及び二次創作者)が自分で想像するしかない。そこで…

 

 

【スパリングマシン】

〜好きなパーツをえらんで、キミだけのスパムトンを手に入れよう!〜

Ⅰ髪の毛の色

①元々黒かった(一貫して変化なし)

②元は白かったがビッグになる前に黒に染めた

③元は白かったがビッグになる前に黒に染め、館から追い出された際に白に戻ったが館に忍び込む際に再度黒に染めた

 

Ⅱ背の低さ

①元々低かった

②館に忍び込む際に酸を渡って低くなった

③館から追い出された際に酸に落ちて低くなった

 

Ⅲ肌の色

①元々白かった(一貫して変化なし)

②元々白かったがビッグになったときに色を塗り、館から追い出された際に白に戻った

③元々白かったがビッグになったときに色を塗り、館に忍び込む際白に戻した

④元々薄オレンジ色だったが館から追い出された際に白くなった

⑤元々薄オレンジ色だったが館に忍び込む際白く塗った

 

etc....

 

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(BIG時代のスパムトンと思われるポスター。髪は黒だがサングラスはなく、肌の色は白にも薄オレンジにも見える。色あせているだけ?)



 

 

4.キミがスターに願うとき

 原作の『ピノッキオの冒険』は連載小説であり、元々は第十五章で終わる予定だったのだが、読者の強い要望により続きが書き足され、最終的に良く知られる「人間の男の子になれました、めでたしめでたし」というエンディングになったという経緯がある。

 第十五章で、ピノキオは悪いキツネとネコに「金貨を増やせる」と嘘をつかれ、連れ出された先で強盗にボコボコにされた挙句、木に吊るされて動かなくなってしまう。ここで終わりにしてはあんまりな最期だ。

 

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 スパムトンはピノキオの物語でいう騙す役と騙される役、どちらでもある。

 UNDERTALEを通っているプレイヤーは疑問を持ちにくいが、DELTARUNEの世界で「タマシイをよこせ」と要求してくるダークナーは今のところスパムトンだけだ。ファンタジーの世界で明確な目的も明かさずに「商談(契約)しろ」「タマシイをよこせ」と迫るのは悪魔など邪悪な輩と相場が決まっており、執拗に指輪(『ソロモンの遺訓』においては悪魔や天使を使役するのに用いられる)を渡そうとしてくることも相まってかつてないほどに胡散臭いキャラクターに仕上がっている。

 一方で、彼の元同僚や知人から語られる過去の壮絶な転落ぶりは、彼の純粋さを物語るものばかりで、蔑んでいいのか憐れむべきなのかわからなくなってしまう。そんなギャップのあるところも彼の魅力だと思う。

 

 原作のピノキオは最終的に心を入れ替えたのち勤勉に働くようになり、家族への献身を認められついに仙女(ブルーフェアリー)に人間の男の子にしてもらうというハッピーエンドを迎える。しかし、現実の世界では家族や社会に尽くしたとしても自分の望みが叶うとは限らないし、幸せになれる保証はない。実際スパムメールであるスパムトンがいくら頑張ったとしても、ライトナーにありがたがってもらうことは難しそうだ。彼の転落は、本当に彼だけのせいといえるだろうか?

 

 ゴーストと身体性の観点から無理矢理当てはめてみても、「これはオレだ」という確信を持ってボディを手に入れたメタトンやぷんすか氏とは異なる。スパムトンは自分の「野望」や「憧れ」のためにNEOのボディを乗っ取っており、グラグラではあるがダメージは入るので一応結合はしているという程度の状態だ。しかし、本人がそれで納得しているなら、(製作者はともかく)第三者からの承認なんて本当に必要だろうか?これはものすごくデリケートな問題である。

 

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 UNDERTALE世界ではモンスターのちり(遺灰)を「せいぜん だいじにしてた なんか」に撒くことが弔いとされていたが、DELTARUNE世界の墓には「せいぜんの いきざまを しょうちょうするモノ」が埋められているらしい。

 アイデンティティを補完しあうライトナーとダークナーが(場所は分けてかもしれないが)一緒に埋められると考えると、童話の『すずの兵隊』の様でロマンチックな死生観ではある。一方で、誰の役にも立てなかったダークナーや何も象徴を持てなかったライトナーはどうなってしまうのかという疑問も残る。闇の世界でいう「地下」が、誰からも見捨てられたモノ達が幽閉されている場所だとしたら、今後のラスボス達もそんな反逆を見せてくれるのかもしれない。

 

 

 

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(DELTARUNE Chapter2 スパムトン考察2『キミがスターに願うとき』 終)



【訂正】

マネキン憑依説の文中に「元々ゴーストだった」可能性について加筆しました。(2021.11.6.09.42)